「他人の転職が気になる人」「他人の年収が気になる人」は、なぜ自分のキャリアが動かないのか?脳科学が教える"突き抜ける人"の思考回路とは?

Emi Sakashita
α事務局

「他人の転職が気になる人」「他人の年収が気になる人」は、なぜ自分のキャリアが動かないのか?脳科学が教える"突き抜ける人"の思考回路とは?

同期が外資に転職した。後輩がマネージャーに昇進した。元同僚が海外赴任を決めた。
SNSで外銀転職、MBA留学の人を目にした。

そのとき、あなたの頭に最初に浮かんだ言葉は何だったでしょうか。

「すごいな」だったでしょうか。それとも「でも、あの人は○○だから」だったでしょうか。
あるいは「あの会社って実際どうなんだろう」と"分析"を始めたでしょうか。

この一瞬の反応に、あなたのキャリアが動かない本当の理由が隠れています。

あなたの脳は「他人の査定」に忙しい

私は東大薬学系研究科で海馬・歯状回の研究に携わり、コロンビア大学で臨床心理学を学んだ後、アルファ・アドバイザーズCOOとして17年間で累計8,000名以上のキャリア支援に関わってきました。

その中で、キャリアが停滞する人に共通するパターンをひとつだけ挙げろと言われたら、迷わずこう答えます。

他人のキャリアの「査定」に、脳のリソースを使いすぎている。

脳科学の研究で、他人の行動を評価・批判する行為が線条体(報酬系)を活性化させることがわかっています。つまり、他人のキャリアを「あれはうまくいかないだろう」「あの選択はリスクが高い」と査定する行為は、脳にとって気持ちいいのです。

問題は、この「気持ちよさ」にハマると、自分のキャリアを動かすためのエネルギーがそっちに吸い取られることです。前頭前皮質のワーキングメモリには容量の上限があります。他人の査定に使った分は、自分の戦略を考えることには使えません。物理的に。

転職を「考えている」だけの人の脳内で起きていること

たとえば、転職を考えているとしましょう。

突き抜ける人は、自分の市場価値を棚卸しし、業界の構造を分析し、具体的にどのポジションに自分のスキルセットが合うかを考えます。脳のリソースは100%自分の次のアクションに向いています。

一方で、動けない人はどうでしょうか。転職サイトは開く。求人は見る。しかしそこに混じるのが、「前に辞めたあの人、結局うまくいったのかな」「あの会社に移った同期、本当に年収上がったのかな」「あの業界に行く人って、だいたい○○だよな」——他人のキャリア査定です。

これは怠けているわけではありません。脳が「他人を評価する」という、より楽で気持ちいい処理に逃げているのです。なぜなら、自分の市場価値を直視するのは扁桃体にとってストレスだから。不確実性を伴う自己評価よりも、他人の選択を「採点」する方が、脳にとってずっと安全で快適なのです。

昇進する人・トップキャリアに進む人が絶対にやらないこと

昇進やキャリアアップに関しても同じ構造が見えます。

「なぜあの人が先に上がったのか」を分析する人は多いです。「上司の評価が偏っている」「あの人はアピールがうまいだけだ」——こうした"分析"は、脳の中では正当な思考に見えます。しかし実際に起きているのは、扁桃体の不快反応(悔しい・納得いかない)が先に発火し、前頭前皮質がその感情を正当化する理屈を後づけで組み立てているだけです。

感情が先、理屈は後。これが脳のデフォルトの処理順序です。

アルファ・アドバイザーズで数千人のキャリアを見てきた代表TJはよくこう言います。「他人の昇進の理由を分析している時間があったら、次の四半期で自分が出す成果を1つ決めろ」。ゴールドマン・サックスで叩き込まれたこの感覚は、脳科学的にも理にかなっています。他人の昇進を分析する行為は、脳に「自分はまだ動かなくていい」という免罪符を与えてしまうからです。

「みんなどうしてる?」が口癖の人へ

キャリア相談の現場で、最も多い質問のひとつがこれです。

「同じような経歴の人って、みんなどうしてますか?」

この質問自体は自然です。しかし、この質問が繰り返し出る人のキャリアは、高い確率で停滞しています。なぜなら、「みんな」を確認することで安心を得ようとする脳の回路が強く作動しているからです。

集団主義文化で育った脳には、同調確認の回路が深く刻まれています。「みんなと同じ方向に動いていれば安全」というのは、進化的には正しい。しかし、キャリアで突き抜けるというのは、定義上「みんなと違うことをする」ことです。

「みんなどうしてる?」という問いが頭に浮かんだ瞬間、それは脳の同調プログラムが起動したサインだと気づくこと。気づくだけで、拘束力は弱まります。その上で、「自分はどうしたいのか」に問いを切り替える。このスイッチングができるかどうかが、突き抜ける人とそうでない人の分岐点です。

2026/04/29 15:19:42
Emi Sakashita
α事務局

脳のリソースを「自分のキャリア」に取り戻す、3つのトレーニング

ここまで読んで、「自分もやっている」と感じた方は多いと思います。繰り返しますが、これは意志の弱さではなく、脳のデフォルト設定の問題です。だからこそ、意識的なトレーニングで書き換えられます。

① 「これは自分の人生に影響があるか?」テスト
他人のキャリアが気になった瞬間、この問いを入れてください。答えがNoなら、その思考を手放す。最初は難しいですが、繰り返すうちに前頭前皮質が新しい回路を形成します。

② 感情と理屈を分離する
「あの転職はリスクが高い」「あの昇進は納得いかない」——そう感じたとき、「この理屈を思いつく前に、自分は何を感じていた?」と1秒だけ遡ってみてください。悔しさ、焦り、嫉妬。感情を認識するだけで、後づけの理屈に振り回されなくなります。

③ 「自分の次のアクション」に変換する
他人のキャリアが頭をよぎるたびに、「で、自分は今週何をするか?」に変換する。これは精神論ではなく、前頭前皮質のリソースを物理的に再配分するトレーニングです。

他人のキャリアに興味がなくなったとき、あなたのキャリアが動き始める

グローバルで突き抜ける人の脳は、特別な構造をしているわけではありません。ただ、脳の有限なリソースを自分の次の一手に集中させる回路が鍛えられているだけです。

他人を査定する時間を、自分の市場価値を上げる時間に変える。それだけで、キャリアは動き始めます。

あなたの脳のリソースは有限です。何に使うかは、あなたが決められます。


坂下絵美
女子学院→東京大学薬学部→東京大学薬学系研究科(池谷研究室・脳科学/海馬研究)→コロンビア大学教育大学院(臨床心理学)。アルファ・アドバイザーズCOO(2020年〜)。アルファは17年間で累計8,000名以上をサポート。脳科学とキャリアの交差点から、「突き抜ける人の脳の使い方」を発信中。

2026/04/29 15:19:50

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