塾の宿題を全部やらせてはいけない。実は宿題をすればするほど成績が落ちる?「認知負荷」という概念を知っていますか

Emi Sakashita
α事務局

「塾の宿題を真面目にやっているのに、成績が伸びない」。
「塾の課題が多すぎて、親が疲れる、、その割に成績が伸びない、復習などの時間が十分取れない」。
「塾の費用も高いし、すべてこなさないと損という気もして、子どもも私も無理して宿題におわれている。

年間8,000人以上の学習サポートをしていて、最も多い相談がこれです。

真面目にやっている。毎日机に向かっている。
宿題も全部出している。なのに偏差値が動かない。テストで同じミスを繰り返す。
こういうとき、多くの親御さんは「もっとやらせなきゃ」と思うでしょう。
塾の先生に「もう少し量を増やしましょう」と言われる。さらに別の問題集を追加する。

そしてなんとなく「安心」するけれど、結局成績は伸びない、本番の受験でもトップの志望校に受からない・・。

私は脳科学を研究してきた立場から断言します。それは完全に逆効果です。

問題は「量」ではないのです。脳の処理容量に合った負荷の設計ができていない。これが全てです。


「認知負荷理論」を知っていますか

認知負荷理論(Cognitive Load Theory)は、オーストラリアの教育心理学者ジョン・スウェラーが提唱した理論で、世界中の教育設計の基盤になっているものです。

簡単に言うと、人間の脳が一度に処理できる情報には明確な上限がある、という話です。

ワーキングメモリ(作業記憶)という脳の処理スペースがあるのですが、ここに入れられる情報はだいたい4〜7チャンクが限界。しかも小学生はこの容量が大人よりさらに小さい。

この限られた処理スペースに、どんな種類の負荷をかけるかによって、学習効果は劇的に変わるのです。

認知負荷には3種類あります。


その1:内在的負荷(Intrinsic Load):学ぶ内容そのものの難しさ

これは教材の内容が本質的に持っている複雑さのことです。

たとえば「3+5=8」と「連立方程式」では、脳が処理しなければいけない要素の数がまるで違う。連立方程式は「変数が2つ」「式が2本」「それを同時に操作する」という複数の要素を一度にワーキングメモリに載せなければならない。

内在的負荷は、学ぶ内容の性質上、減らすことが難しい。でも、適切な段階分け(スキャフォールディング)をすれば、一度に脳に載せる量をコントロールできます。


その2:外在的負荷(Extraneous Load)——教え方・教材の設計が生む無駄な負荷

ここが最大の問題です。

外在的負荷とは、学習内容そのものとは関係ないのに、脳のワーキングメモリを消費してしまう「ノイズ」のことです。

たとえば——

問題文が無駄に長い。 情報が整理されていない。どこが条件でどこが問いなのか、読み解くだけで脳のリソースを大量に消費する。

解説が冗長。 本質的なポイントが埋もれていて、子どもは「何を理解すべきか」がわからないまま読んでいる。

同じ単元のプリントが10枚。 似たような問題を大量に解かせることで「反復」のつもりだが、脳は途中から処理を放棄しています。これは学習ではなく、作業です。

塾の大量宿題の多くは、この外在的負荷の塊です。

子どもが「頑張っているのに伸びない」とき、脳の処理容量の大半がこの外在的負荷に食われていて、肝心の学習に回すリソースが残っていない。

月謝5万円を払って、子どもの脳に「ノイズ」を詰め込んでいる状態です。


その3:関連的負荷(Germane Load)——本当の学びに使うべきリソース

これが学習の本丸です。

関連的負荷とは、新しい知識を既存の知識と結びつけ、脳内にスキーマ(知識の構造体)を構築するために使われる認知資源のことです。

「あ、これってあの公式と同じ構造だ」「この問題、前にやったあれと似てるけど、ここが違う」——この気づきが生まれる瞬間こそ、脳が本当に学んでいる瞬間です。

ところが外在的負荷で脳のワーキングメモリが埋まっていると、この「気づき」のための余白がない。問題を解いてはいるけれど、脳の中では何もつながっていない。

だから「やったのに覚えていない」「テストで応用が利かない」が起きる。


塾の宿題の何が問題なのか?

ここまで読んで気づいた方もいると思います。

大手塾のカリキュラムは基本的に全員に同じ量の宿題を出します。クラス全体に一律で配られるプリント。全部やることが前提。終わらなければ「頑張りが足りない」と言われる。

でもこれ、認知負荷理論の観点から見ると完全に破綻しているのです。

なぜなら、子どもによってワーキングメモリの容量も、既存の知識構造(スキーマ)も全く違うから。

ある子にとっては適正な負荷でも、別の子にとっては外在的負荷まみれになっている。ある子は10問中3問でスキーマが構築されるのに、10問全部やらされることで逆に混乱する。

プリント山程、、というのがキャッチーで話題にもなってますが、、実になる勉強なのか、しっかり考えるべき時です。

「宿題を全部やること」が目的になった瞬間、学習ではなくなるのです。

「ちゃんとやってるのに」の正体

テストが返ってきたとき、こんなことがありませんか。

「この問題、宿題でやったよね?」「なんで間違えたの?」

子どもは黙る。親はイライラする。

でもこれ、子どもの怠慢ではないのです。

宿題をやったときの脳は、外在的負荷を処理するのに精一杯で、関連的負荷(本当の理解)にリソースが回っていなかった。だから「手は動かしたけれど、脳には何も残っていない」。

さらに言うと、「なんで間違えたの!」という叱責自体が、子どもの扁桃体を活性化させ、次のテストでさらにパフォーマンスを下げる。恐怖状態では前頭前皮質(思考の中枢)がシャットダウンするからです。

「ちゃんとやってるのに伸びない」は子どもの問題ではなく、負荷設計の問題です。

では、親は何をすべきなのか

① 宿題の「全部やらなきゃ」を捨てる

塾の宿題は、全部やることに意味があるわけではないのです。

お子さんが「もう理解できている問題」を10問やらせるのは時間の無駄です。逆に「全く手が出ない問題」を無理にやらせるのも、外在的負荷が高すぎて学習効果がほぼゼロです。

その子にとって「ちょっと難しいけど考えれば解ける」ゾーンの問題だけを選んでやる。 これが認知負荷理論に基づいた最適な学習です。

塾の先生に「全部やらなくていいですか」と聞くのが怖い気持ちはわかります。でも聞いてください。お子さんの脳を守れるのは、塾ではなく親です。

② 「量」ではなく「接続」を意識する

宿題を3問に絞ったとして、そのあと何をするか。

「この問題、前にやったどの問題と似てる?」と聞いてみてください。

この一言だけで、子どもの脳は関連的負荷(スキーマの構築)に切り替わります。問題を解く行為そのものよりも、問題と問題をつなげる行為のほうがはるかに学習効果が高い。

③ 睡眠を削る宿題は今日からやめる

これは前回も書きましたが、繰り返します。

睡眠中に海馬から大脳皮質へ情報が転送され、長期記憶が形成される。睡眠を削って宿題をやるのは、「覚えたことを捨てろ」と脳に命令しているのと同じです。

22時に終わらない量の宿題は、量が間違っている。お子さんが間違っているのではないのです。

④ テスト返却後の声かけを変える

「なんで間違えたの」ではなく、「この問題、どこまではわかった?」と聞いてください。

この質問は、子どもの脳をメタ認知(自分の理解度を客観視する力)モードに切り替えます。「どこまでわかって、どこからわからなかったか」を自分で言語化できるようになると、次に同じ単元に向き合ったときの学習効率が格段に上がるのです。

「なんで間違えた」は扁桃体を刺激して思考を停止させる。「どこまでわかった?」は前頭前皮質を活性化して思考を深める。声かけひとつで、脳の使い方が正反対になります。


私の体験を少しだけ・・

私自身、公文を小さい頃にやっていて、教材をかなり早い段階で終えています。

でも母が私にさせたのは「全部やらせる」ではなかったのです。できる問題はどんどん飛ばして、引っかかるところだけに時間をかける。読書の時間、遊びの時間、トロンボーンの練習、全部確保した上で、勉強の「質」だけを最適化してくれていた。

母は高卒で、認知負荷理論なんて知らなかったと思います。でも直感的に、「この子の脳に合った量と質」を見極めていた。鬼の形相で絶対女子学院にはいるのよ!!とかもなかったですし・・私が楽しんで勉強先にやっとけば楽だしねーくらいの気軽さだったようです。(それは母が、勉強してこなくて苦労したから)

結果として、女子学院→東大現役合格→コロンビア大学大学院。塾漬けの毎日ではなく、睡眠も遊びも確保した上での結果です。(女子学院の受験なんて塾の直前までいっつも外遊びしてましたし、受験の前日も"お見合い結婚"という松たか子とユースケ・サンタマリアのドラマ見てましたね・・懐かしい...)

あとから東大の池谷研究室で海馬の研究を始めて、母がやってくれていたことの意味を科学的に理解しました。あれは認知負荷の最適化そのものだった、と。

「月謝5万円の逆効果」から目を覚ましてほしい

塾に月謝5万円を払っている。宿題もちゃんとやらせている。でも成績が動かない。

このとき、「もっとやらせなきゃ」は最悪の選択肢です。

脳の処理容量はすでに限界を超えている。そこにさらに負荷を追加するのは、水が溢れているコップにさらに水を注ぐのと同じです。

やるべきは逆です。負荷を減らすこと。

宿題の量を半分にする。できる問題は飛ばす。苦手な単元だけに集中する。その子のレベルに合った負荷だけを、適切な順番で、適切な量だけ与える。

これだけで、子どもの脳に「余白」が生まれる。その余白に、本当の理解(スキーマの構築)が入ってくる。

量を減らしたのに、成績が上がる。 認知負荷理論を理解すれば、これは当たり前の結果なのです。

アルファジーニアスの学習設計

私たちアルファジーニアスが、大手塾のように全員に同じカリキュラムを配らないのは、ここに理由があります。

オンラインで、一人ひとりの理解度に合わせた先取り特訓。中学受験で御三家を目指す子も、海外大学を見据える子も、東大・慶應レベルの学力を先取りで積み上げる子も、その子の脳の処理容量に合った負荷設計を個別に行う。

外在的負荷を徹底的に排除し、関連的負荷に脳のリソースを集中させる。無駄な反復はさせない。できる問題は飛ばす。引っかかるところだけを、深く、丁寧にやる。

CEOのTJは商社からシカゴMBA、ゴールドマン・サックスIBDを経て、17年間で8万人以上のキャリア・教育支援を率いてきた人間です。「ゴールから逆算する」という発想が骨の髄まで染みている。受験のための勉強ではなく、その先のキャリアで圧倒的に勝つための学力設計を一緒に作ります。

私自身は東大薬学部で海馬と歯状回の研究をし、コロンビア大学で臨床心理学を学びました。「なぜ伸びないのか」「どこで詰まっているのか」を脳科学の視点から分析できるのが、私たちの強みです。

塾の宿題を全部やらせて消耗するのではなく、お子さんの脳に合った負荷で、最短距離で成果を出す。

「真面目にやっているのに伸びない」にはっきりとした原因があること、そしてそれは解決できることを、知っていただきたいのです。

坂下|アルファジーニアスCEO
東京大学薬学部卒(脳神経科学研究)→ コロンビア大学教育大学院(学習科学・認知科学)
18年間で80,000人以上の学生を東大・ハーバード・外資系トップ企業へ導いたアルファアドバイザーズの教育メソッドを、脳科学と学習科学のエビデンスで体系化。成績アップ、塾クラスアップ、御三家受験、SSAT早期高得点など定評あり!

2026/03/06 15:44:26

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